※この記事は沈下修正の専門家アップコンの社長メルマガ〔ニッポン上げろ!〕のバックナンバーです。
こんにちは!
コンクリートを上げるからアップコンの松藤です。
さて、メルマガ2号、3号の「なんで起業したの?」を覚えていますか?
2号 なんで起業したの?【前編】
3号 なんで起業したの?【後編】
今から20年前、2000年7月頃、
オーストラリア政府機関の人から話がありました。
「シドニーの施工会社が日本に進出したがっている。相談に乗ってくれませんか?」
私は、
「みんな簡単に思っているけど、途中で投げ出してしまうんですよ。
よくある話ですよ。」
と、あまり関心はないと答えました。
「とは言っても先方は結構積極的で、とにかく一度会って話だけでも聞いてください。」
お世話になっていることもあり、
「それでは一度お会いすることはしましょうか。」
ということで話を聞くことになりました。
数日後の午前、私はシドニー北部にある“彼”の事務所を訪問しました。
商店街の裏手の静かな環境の中にある2階建ての事務所です。
玄関のチャイムを鳴らすとドアを開けたのは“彼”でした。
「Hello, Nobu!」
ラグビー選手のような体形の“彼”が、
こちらが自己紹介もまだしていないのにいきなり握手してきました。
大きなごわごわの手はいかにも「土建屋」、「たたき上げ」という感じです。
でも“彼”の満面の笑顔は純真な子供のようでもあり、
ちょっと悪く言うと芋っぽい感じでもありました。
「Come in!」
2階の小綺麗なミーティングルームに通され1対1で話が始まりました。
と言っても話すのはほとんどが“彼”で、10対1くらいの感じです。
その内容は簡単に言うと、
1.下がったコンクリートの床をウレタンの力で持ち上げてまっすぐにする
2.オーストラリアですごく儲かっている
3.だからこのビジネスは日本でも成功するはずだ
4.日本に会社を作りたいので手伝ってほしい
ということです。
まあ、今なら私も当たり前のように、
下がったコンクリートの床を持ち上げてまっすぐにしていますけど、
初めて聞いたこの時は
「”彼“は詐欺師だ」「コンクリートがウレタンで上がるわけない」「早くここから帰りたい」
と10対1の会話の間ずっと思っていました。
この場で手伝うのを即断ったら殴り殺されそうだなと思いながら、
「後日返事します。」
とあいまいな返答で足早に“彼”の事務所から退散してきました。
ただ別れる時、手を振りながら
「See you soon、Nobu!」
と言った”彼“の笑顔は玄関のドアを開けた初対面の時と同じ純真そのものでした。
後日、
「申し訳ないけれど興味ありません。」
と、紹介してくれたオーストラリア政府機関の人へ連絡しました。
2000年の7月はそんな感じで一つの事件が終わったようでしたが
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10月の終わり頃、
私が住んでいた街シドニーはオリンピックも終わり
お祭り騒ぎからようやく日常を取り戻そうとしていました。
10月の後半から11月の中旬は、私がシドニーの中で最も大好きな季節です。
南半球なので季節はちょうど日本と逆、東京の4月から5月頃の気候でしょうか。
ジャカランダの紫色の花が、オレンジ色の屋根瓦と薄緑のジャカランダの葉をバックに映える
美しい景色が広がっています。
その日、設計事務所を経営していた私が仕事を終わらせて自宅に帰ると、
妻が言いました。
「今日、オーストラリアの人が家にきてこれを持ってきてくれた」
視線の先には両手で抱えるのが精いっぱいなほど大きな花束が、リビングに飾ってありました。
「誰が持ってきてくれたの?」
と聞くと、
「私のことを知っていると言って、名前は聞いたけどよくわかんなかった」
答えのない回答のやり取りをしている時、
玄関のチャイムが鳴りました。
そこにはラグビー選手のような“彼”が立っていました。