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第24号(2020/11/13発行)【後編】見習い修行
2020.11.20
ニッポン上げろ!
第24号(2020/11/13発行)【後編】見習い修行
※この記事は沈下修正の専門家アップコンの社長メルマガ〔ニッポン上げろ!〕のバックナンバーです。
こんにちは!
コンクリートを上げるからアップコンの松藤です。
今回は
見習い修行【前編】の続きです。
引き続きシドニーの夏、1月も終わりの頃。
オーストラリア・デー(オーストラリア建国記念日)も終わり
お祭り騒ぎの楽しい夏休みから、
学校も職場も日常を取り戻そうとしていた頃。
私はまたまたピーターと一緒に現場で施工していました。
ジョンとも一緒に現場へ行くこともありましたが、
なぜかピーターとは馬が合い、よくペアで行動していました。
ピーターは日本語が少しできるオージーです。
当時のオーストラリアは、
第2外国語としてフランス語を抜いて日本語が1番人気になってい
ました。
ピーターのガールフレンドもワーキングホリデーで来豪している日
本人だそうです。
なので、
ピーターは私に日本語の練習がてら良く話しかけてきます。
早朝、
「Nobu, 今日はブラックタウンへ行くよ。1,000㎡
の倉庫の沈下修正だ。」
「え~っ? ブラックタウン?」
安全な印象が強いシドニーの街の中でも、
ブラックタウンは結構危険と言われる街です。
ギャング同士の発砲による殺人事件や麻薬の取引・売春など、
近寄らないには越したことがないといわれているところです。
「ピーター、危なくないの?」
「大丈夫。昼間だし、
ランチは前もってサンドイッチを買って倉庫の中で食べるから。」
ということで、「あまり行きたくないな~」
という気持ちを持ちながら現場に到着しました。
こういう気持ちで仕事に向き合ってはダメなんだ、
というのは後からわかることになりました。
約1,000㎡の沈下した倉庫の床を、
私を含めた4人が5日間で修正します。
倉庫の中の荷物はすべて他の倉庫へ移されて、
体育館のような感じです。
(荷物を移動しなくても修正できる!
というのが売りの工法なのに)
私の仕事は
スタッフみんなから「上手いね~」と言われている注入作業です。
まず、デュポン製のタイベック防護服に着替え、
ガンの清掃をします。
その間に他の3人は床レベル測定と削孔位置のマーキングとドリル
削孔をしています。
準備が整ったら4人力合わせてホースをトレーラーに載っているコ
ンテナから
倉庫室内へ引き込みます。
(あの重労働が朝と夕方に1回ずつあります。)
ピーターが最初に注入する穴を指定します。
私は万が一に備えて、
ウレタン樹脂の飛散を防止するためのゴーグルを顔に装着します。
それからは、私が延々と注入し続けるだけです。
このころはトリガーの引きの時間と離しの時間のコンビネーション
を
自分で決めていました。
もちろん、ピーターにこんな感じ?
と説明して確認してもらいながらですけど。
午前中の作業は順調に進みました。
昼休み前に倉庫の責任者の人が一度現場を見に訪れてきましたが、
順調に進んでいるのを確認してお昼を食べに外出しました。
「ランチー!」
ピーターの声で午前中の作業は終了です。
私たちは倉庫の床に座って話しながらサンドイッチを食べ、
後は午後の作業が始まる時間までダラダラと昼寝をしたりして休憩
します。
外は残暑の強い太陽光線が降り注いでいますが、
倉庫内は窓を開けているため、風が通り抜けさわやかです。
出発前のブラックタウンと聞いた時のいやな気持は完全に忘れてい
ました。
「さーて、始めようか~。」
ピーターが声をかけ、午後の作業がスタートします。
午後一は午前中の最後の注入孔の隣の隣、
つまり一穴とばしたところから注入することになりました。
私はノズルを注入孔にさし、ガンを固定し、ゴーグルを着け、
トリガーを引きます。
ピシューッ!
バ ン ッ ! ! !
「NOBU !」
・
・
・
ワワワーッて感じでしょうか。
私は何が起こったのか全く分からず、というか全く何も見えず、
3人のオージーに担ぎ上げられ、
トイレの手洗い洗面台に仰向けにされました。
そして、蛇口から最大限の勢いで私の目・顔に水をかけます。
一人が私の目を指で開いた状態にして、
私の目からコンタクトレンズを外します。
さらに水をかけ続けます。
多分5分くらいだったでしょうか。
ようやく3人から担ぎ下ろされトイレの床に座らされました。
「Nobu, Are you OK ?」
私はこの時まで自分に何が起こったのか、
全くわかりませんでした。
「暴発したんだ、ウレタンが。」
「ゴーグルしているけど、
ゴーグルと鼻の間の隙間から飛び散ったウレタンが入ったんだよ。
」
「
Nobuが午前中に注入したウレタンが午後一の孔まで届いていた
んだ」
「この目薬を差して!」
「これから病院へ行くぞ!」
「奥さんに電話できるか?」
次から次へと3人から声を掛けられ、私は頷いているだけでした。
ピーターが私のパサートを運転し、
病院へ連れて行ってくれました。
幸い、病院では診察後大丈夫と言われ、目薬を渡され、
そのままピーターが家まで送ってくれました。
私は妻に電話していなかったので、
早く帰宅した私を見て 「どうしたの?」 と心配してくれました。
ピーターが妻に日本語で説明し、
「今日は安静にしているように」 と言って帰っていきました。
・
・
・
その日の午後7時ころ家のドアチャイムが鳴りました。
ドアの向こうには“彼”がいます。
ドアを開けると”彼“は
「Nobu,大丈夫か? I’m Sorry.」
と謝ります。
別に自分でやったことなので謝る必要はないよと私が言うと
”彼“が、
「Nobu,
明日からもうお前は注入しなくていい。」
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