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2021.02.22ニッポン上げろ!

第51号(2021/2/19発行)POSSIBILITY : 0%【2】

※この記事は沈下修正の専門家アップコンの社長メルマガ〔ニッポン上げろ!〕のバックナンバーです。

 

こんにちは!
コンクリートを上げるからアップコンの松藤です。

 

前回のお話はこちら

 

「Nobu, なんでこのレストランが人気なのか分かるかい?」

私も何度も来たことのあるこのタイレストランは
いつも大勢の客でにぎわっています。

「料理は美味しいし、値段もリーズナブルだし、周りはまあまあ収入があって
外食が好きそうな人たちが住んでいるところだし・・・。」

   「全部正解だ。」

(なんだ。結構当たり前の答えじゃないか。)

「Nobu, もう一つ答えがあるんだ、分かるかい?」

「いやー、特にー。何ですか?」

「この街には昔からベーカリーショップしかなかったんだ。
そして後から小さなチャイニーズのテイクアウェイショップができて、
それ以降ずっと何十年もこの2件の店だけで、この街の人たちの胃袋を満足させていたんだ。

別に文句を言う人は誰もなく、
外食すると言ったらベーカリーかチャイニーズがお決まりっていう街だった。」

  (フムフム)

「10年位前、この街にこのタイレストランがオープンしたんだ。
料理は美味しいし、メニューは種類も多いし、
そしてどの料理も家では作れないような凝ったものばかりで、大人気になった。」

(フムフム)    

「ただ、一つだけ問題があった。」

「問題?」

「そう、値段が高いんだよ。
ベーカリーやチャイニーズのテイクアウェイに比べたら3倍以上も高い。」

「それはそうでしょう。タイレストランは店構えからして立派だし、
それをテイクアウェイショップと比べるなんて。」

「確かにそうだ。今まで5ドルでおなか一杯になっていたのが
1品で10ドル以上だとやはり抵抗はある。」

(フムフム)    

「だから最初は、少しお金に余裕のある人たちの
デートスポット的なレストランというような位置づけとしてとらえられていた。」

(フムフム)

「そしておいしくて高い店という評価がついたんだ。」

「値下げはしなかったんだね。」

「そう、レストランオーナーは値下げしようとしなかった。
シェフの腕は一流だし、サービスも最高だから、
それに見合う値段は当然だと思っていたそうだ。」

「強気だね!」

「オーナーは自信があったそうだ。
この街の人たちはパンとチャイニーズフードに慣れ親しんでいた分、
新しいものには少し抵抗を感じる人が多かったそうだ。
クオリティを犠牲にして値段を下げれば、少しは多く人が来るかもしれないが、
それではパンとチャイニーズフードとタイフードが同列になってしまう。
それではダメなんだ。自分たちが売っているのはタイフードではなくタイ文化なんだ、って言うんだよ。」

「タイ文化?」

「その頃、オーストラリアではマルチカルチャリズムという政策があった。」

「知ってるよ。オーストラリアはもう英国のほうを見て行動するのではなく、
自分たちはアジアの一員であるという考えだよね」

「そうだ。レストランオーナーはこれからのオーストラリア人は
マルチカルチャリズムという風潮に乗って劇的に変わっていくだろうと読んでいたんだ。」

「何が劇的に変わるんですか?」

「オーストラリア人はもともとは保守的な国民性を持っているといわれているんだ。
しかし、これからは新しいものに進んでチャレンジしていくのがトレンドだと皆の意識が変わってきたんだよ。」

(フムフム)  

「オーナーはその時代の流れをうまく読んで値段が高くても、今まで食べたことのない料理に
みんながチャレンジしてくるだろうと思ったんだ。
そして同じような考えを持った様々な国からの移民の人たちが
一気にハイクオリティーの料理を提供するレストランを競うようにオープンしてきたのが1990年代なんだ。」

(フムフム)

「ただ料理を提供するのではなく、カルチャーに変化を加えようとしたことが、
当時の政策ともマッチして成功したんだ。」

「なるほど」

「Nobu, 分ったかい?」

「えっ? POSSIBILITY : 0% の話じゃないの?」

「今、説明しただろ!」

  

「???」

    

    

P.S.
オーストラリアではテイクアウト(take out)を
テイクアウェイ(take away)と表現します。

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