総施工延長 | 503m |
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地割れ最大深長 | 2,400mm |
工期 | 5日間 |
2021年に発生した福島沖地震によって石巻・塩釜港雲雀地区の荷捌き地・野積場に、地割れが複数発生しました。 従来であれば同様の地割れ補修は、地割れの最深部まで露天掘りを行い、転圧を繰り返しながら路盤を造成する方法で補修が行われていましたが、 今回は、複数の課題点があり、掘削をせずに短工期で地割れの充填が可能な工法を検討する事となりました。 その中でも最も優れた工法としてアップコン工法が採用されました。 【課題点】 1.深い地割れが岸壁に近い位置に発生していることから、露天掘りを行う場合は荷捌き地、 野積場だけに留まらず、国の管理する岸壁施設まで解体・掘削を行う必要がある 2.矢板等の土留め処置が困難である 3.岸壁の利用頻度が高く、長期の供用停止が困難であり、2,000mを超える深部までの掘削・埋め戻しを行う工期的余裕がない 下記の条件を満たせる充填工法・材料が必要とされ、 モルタル系充填、水ガラス系充填、ウレタン系充填を比較して検討が行われました。 【検討条件】 1.地割れ幅=最小15mmの狭い空間でも充填が可能な性能を有する 2.不規則な形状の地割れを充填できる性能を有する 3.地割れが深部で海中と繋がっていた場合、海へ材料が流出しない 4.万一材料が流出した場合でも材料の流出を直ぐに停止できる5.材料が流出した場合でも海洋に影響を及ぼさない安全な材料である これらの条件を充足できる最も優れた工法としてアップコン工法が採用されました
資機材一式を搭載したトラックを所定の位置に駐車し、使用機材の準備を行います。
地割れが発生して空洞・空隙が生じている部分の幅、深長をメジャーで確認した後、CCDを使用して空洞・空隙の内部を確認します。
各注入孔で幅・深さの計測を行い注入量を1孔ずつ算出します。
空洞・空隙には塩ビ管を使用して深いところまで隙間なく充填します。
空洞・空隙部分に隙間なく充填されていることをCCDを使用して確認します。
地割れで生じた隙間にウレタン樹脂を注入します。 注入されたウレタン樹脂は発泡し、膨張する性質があるため、1mmに満たない空隙にも入り込み非常に高い充填性能を持ちます。 また、膨張する際に非常に高い圧力を発揮することから、地割れの中に注入された際にある程度の拘束を受けると地割れ周辺の緩んだ路盤を締め固める効果も期待できます。 さらに、注入されたウレタン混合液は90秒~120秒で液体→クリーム状→ゲル状→フォーム(固体)へと変化するため、 土中に海へ続く水道(みずみち)などが存在していた場合でも海へ到達する前に凝固し、水道(みずみち)を閉塞し海への材料の流出を防止できます。
船舶の積み下ろし作業のない期間を狙って連続5日間の工程を予定し作業を行いましたが、途中で急遽船舶の入港があり3日間を終えた時点で一旦作業が中断となりました。 その後、船の停留した3週間を休工とし、船の出航を待って残りの2日間の工程を完了しました。 港湾施設の補修時にどうしても発生する急な工程の変更にも、資機材一式を搭載した機動性の高いプラント車を用いることで難なく対応し、実働5日間の工程を無事終了しました。
アップコン工法 【コンクリート舗装版沈下修正工法】は、港湾施設の長寿命化・災害復旧に貢献する工法です。 地震や台風、地盤沈下などの影響で生じた、コンクリート舗装版、RTG走行路、AGV走行路の、 沈下・不陸・段差・コンクリート舗装版下の空隙・空洞を高強度ウレタン樹脂でコンクリート舗装版を開削せずに短工期で解消します。
今回の岸壁災害復旧工事でも、 環境面、短工期、安全な点を踏まえ、港湾施設の災害復旧や老朽化対策の補修に対し、 有効な工法として期待し今後も積極的に検討をするとの評価をいただきました