地震や地盤沈下によって沈下したコンクリート床を修正する場合、従来は床を取り壊して取り払い、再度コンクリートを流し込む「コンクリート打替え工法」で修正していました。既存のコンクリートを壊す際に大きな騒音と振動が起こり、壊した後はコンクリートガラ(産業廃棄物)が発生していました。
アップコン工法は既設コンクリート床を壊さず硬質発泡ウレタン樹脂で短工期で修正します。従来工法と比較して工事に必要な材料調達から、施工過程、工事終了後の産廃リサイクル等までのライフサイクルCO2排出量を90.2%削減できます。これは、工場の床沈下修正を仮に1,000m2施工した場合、スギの木 約3,300本のCO2吸収量に相当するものです。アップコンは2003年6月創業以来、総施工面積650,837m2を達成(2022年8月時点)。スギの木約210万本のCO2吸収量に相当するCO2排出量を削減しました。
コンクリート打替え工法 | 51,262kg – CO2 |
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アップコン工法 | 5,049kg – CO2 |
ウレタン樹脂は一般的には代替フロン(HFC)や、ノンフロン発泡剤(CO2、HC、HFO)が使用されています。HFCではオゾン層破壊の問題はありませんが、地球温暖化への影響が大きいことから「京都議定書」において排出削減の対象物質となっています。
アップコン工法で使用する硬質発泡ウレタン樹脂は、国内の製造メーカーと共同開発したフロン・代替フロンを発生しない完全ノンフロンのウレタンです。水や海水、並びに土中に含まれる他のほとんどの物質に対して溶出しないので、土壌に影響を与えません。
ウレタン樹脂を注入する際、注入装置から既設コンクリート床下にウレタン樹脂を送り込むため、プラスチック材のノズルという部品を介して注入します。ウレタン樹脂は短時間で硬化しノズルに付着するため、注入作業後は使えなくなります。施工後に大量の廃プラスチックが発生することから廃プラ削減のため、清掃することで再利用可能なノズルを独自開発し、使用しています。
施工現場で回収した廃ウレタンは中間処理施設に搬入され、分別→粉砕処理後、製造工場へと運ばれます。粉末化されたウレタンは、製造工場の焼成工程で石炭の完全代替品として燃料化されます。1,450度の高温で焼成するため、有害な化合物も完全に分解されます。
施工現場で発生した廃ウレタン樹脂
中間処理場で粉末化されたウレタン樹脂
製造工場にて石炭の完全代替品の燃料として、
燃焼させてエネルギーを回収します。
アップコンは、国際標準化機構が定める国際的な環境マネジメントシステム機構「ISO14001」を取得しています。「地球環境に配慮した」事業活動を展開し、循環社会へ対応、地球環境の保全と経済活動の継続的発展に寄与し、さらに「信頼される企業」づくりをめざしています。
アップコン工法は、環境面・経済面・社会面において持続可能な社会づくりに貢献するサービスとして評価をいただき「奨励賞」を受賞しました。
経済のグローバル化やパリ協定の発効、SDGsの制定など社会経済を取り巻く状況の変化を視野に入れ、日本市場において事業者、消費者、投資家、さらには市場関係者に評価が高く、具体的に優れた環境配慮が組み込まれた製品、サービス、技術、ソリューション、ビジネスモデルといった案件を表彰することによって、これらのさらなる開発・普及の促進を図り、持続可能な社会づくりに寄与することを目的に表彰を行うもの。
アップコン工法は、原材料の調達から、生産、流通・販売、使用・維持管理及び廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体を通じて、従来製品等と比較しCO2がより削減された「製品・技術、サービス」として2011年に川崎市より認定されている工法です。
アップコン工法は、ライフサイクル全体を通じて、温室効果ガスの削減に貢献している量(域外貢献量)を算定し川崎市より「川崎メカニズム」に認証いただきました。
2050年の炭素社会の実現に向けてアップコンは「かわさきカーボンゼロチャレンジ2050」の戦略に賛同しています。
気候変動問題が差し迫った課題であることを市民・事業者と認識を共有し、2050年の脱炭素社会の実現に向け、地球温暖化対策を加速化させ、実践するために2020年11月12日に策定された、川崎発の取り組み。